病院の部屋の中央にいる男性がいる様子を示す画像です。
  • 眼表面疾患の原因となる病気
  • CynosBioの取り組み
  • ヒト羊膜基質使用ヒト(自己)
    口腔粘膜由来上皮細胞シート「サクラシー®」

人間は外部のから得る情報のうち大部分を視覚から得ており、一説には80%以上を視覚から得ていると言われます。そのため、事故や疾患により視力が失われてしまうと、その人の日常生活には支障をきたし、その後の人生におけるQOL(Quality of Life)も大きく変化することになります。
例えば、医薬品の副作用によって発症するスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、自己免疫疾患である眼類天疱瘡、熱傷・化学薬品による事故やその他様々な病気で眼の表面(瞼や眼表面の粘膜など)に障害が起こることがあります。これらの疾患などによって眼の表面に存在する幹細胞が障害された状態を、角膜上皮幹細胞疲弊症(LSCD)と呼びます。このような障害は年齢を問わず発症するおそれがあり、患者さまやその家族の皆さまにとって大きな不安にさらされることになります。

角膜上皮幹細胞疲弊症(LSCD)の原因となりうる病気の例として、以下のようなものがあります。

  • 原因傷病名
    症状
  • スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)/中毒性表皮壊死融解症(TEN)
    国の指定難病です。薬の服用や感染症などの後、高熱、皮膚や粘膜の発疹などが生じます。非常に重篤な自己免疫性の疾患で命にかかわります。
  • 眼類天疱瘡(OCP)
    国の指定難病です。特に高齢者に多くみられます。免疫の不具合により自分の抗体が自分自身を攻撃してしまうことで、眼の粘膜にもびらんなどが生じます。
  • 熱・化学外傷
    熱傷や化学薬品が目にかかってしまうなどの事故です。
  • 移植片対宿主病(GVHD)
    白血病の治療で造血幹細胞移植(骨髄移植)をした患者さまに発症することがあります。骨髄ドナーの方の免疫細胞(リンパ球)が、移植を受けた患者さまの身体を攻撃してしまう免疫性疾患です。
  • 再発翼状片
    翼状片は、結膜(白目)部分の異常増殖により、角膜(黒目)にくっついてしまった状態です。治療しても再発することがあります。
  • 眼腫瘍
    瞼や結膜、涙腺などの眼表面にできる腫瘍があります。網膜や視神経など眼球の内部にできる腫瘍もあります。

当社は、患者さまとそのご家族の皆さまが日常生活を取り戻し、再び笑顔あふれる人生を過ごしていただくために、新たな再生医療製品の実用化を日々進めております。
再生医療は、ヒト細胞を原材料として臓器・組織などの移植片を作り、それを治療に用いるという新しい技術です。ヒト由来の細胞としては、患者さま自身の細胞や体性幹細胞、間葉系幹細胞、または体細胞から作るiPS細胞などがあります。いずれも多くの研究機関において、それぞれ再生医療の実現を目指した研究開発が進められています。
当社は、これら国内の優れた再生医療技術の研究機関と連携し、共同開発を行っております。

当社のパイプラインである「ヒト羊膜基質使用ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート(製品名:サクラシー®)」は、LSCDにより生じた眼表面の癒着に対する治療法として開発されました。

サクラシー®は、患者さま自身の口腔粘膜より採取した上皮細胞を、加工したヒト羊膜の上でシート状に培養した再生医療等製品です。角膜の周囲にある幹細胞が欠損するLSCDでは、瞼(まぶた)と眼球が癒着するなどの症状が起こることが多くあります。このような眼表面疾患の患者さまに対してサクラシー®を移植することで、上皮細胞を生着させ、眼表面の異常を修復することを目的としています。

この治療法は、京都府立医科大学眼科学教室によって基礎研究から臨床研究へ進められた後、臨床試験が実施されました。既存の治療法では限界があった眼表面の癒着を修復するための新たな治療選択肢であり、移植によって眼表面が綺麗に整うと、その後の視力改善のための治療を組み合わせることも考えられるようになることが、この治療法の意義といえます。

当社では、サクラシー®の製造販売により、LSCDの患者さまの眼表面再建や視力回復につながる新しい眼科医療の実現を事業目標としております。